第6波

コロナ禍は続き、現在第6波。
職場ではまだ数人が感染しているレベルでしかないが、そのうちもっと広がることになるだろう。

コロナウイルスに関するワクチンの効果などで、物事を科学的に考察出来ない人の多さにサイエンティストの端くれとして、呆れつつも、無力感を感じている。
科学者としてどう説明していくべき問題か。
ワクチンは天然痘でのエドワード・ジェンナーの功績から始まり、どれほど人類の病気の予防に貢献してきたか、ものすごい人知の賜物と思うのだが、ごく僅かな確率でしか起こらない重篤な副反応や、大したことのない副反応のネガティブな印象が大きく取り上げられることが多い。それを聞いた人々が先のちゃんと科学的な評価が出来ず、解釈を完全に間違えるという展開が多い。

以下のニュース。
オミクロン株感染で入院の6割は2回接種済み 国立感染研の分析で判明
https://news.yahoo.co.jp/articles/3046ee7e44f1278a2692e3c52a05876f09bcfa2a
記事では、新型コロナウイルスのオミクロン株に感染して入院した人の約6割がワクチンを2回接種済みだった。との記載でワクチンが効いてないじゃんと簡単に誤解してしまう人が多い。

その記事のソースは以下、感染症研のサイトにある。
www.niid.go.jp
これ読むと分かるが、そもそもこの疫学調査はワクチンの効果を評価するために行っているものではない。多くの症例に発症前14日以内に海外への渡航歴があり、50例(41.0%)に発症前14日以内のCOVID-19確定例もしくは疑い例との濃厚接触歴を認めた。とのこと。

よって発症者が多いのは当然とも言え、調査目的はその経過を見たものということ。ワクチンの効果を見るなら、ワクチン接種の有無と入院の有無を2x2マトリックスにして、χ2検定とかfisher正確性検定をすれば良いわけだが、比較する集団に要因(この場合、ワクチン接種の有無と入院の有無)以外のバイアスがあってはいけない。今回の調査集団はそもそも発症リスクが高い集団に偏っているので、そういう調査には活用出来ないものとなる。

この記事は明らかにミスリードで、もっとそういう部分の誤解を招かないような書き方をマスコミはすべきだ。書いている記者本人が理解出来てないのなら話しにならないが。