赤い疑惑

TBSが放送50周年ドラマ特別企画と銘打って6月の水曜日に3週に渡って放送された「赤い疑惑」。
少し思うところを書いてみたい。
山口百恵の出た原作が放送されていた時、自分は小学2年生だった(年がばれてしまうが・・・)。
小学生ながら主人公の山口百恵が可哀想で、自分は正直怖くて見られなかった。
当時の小学2年生なら21時にはもう寝床に入っているだろう。自分は怖いので見たくないのだが、
画面を見なくても音が聞こえてきてしまう。あの発作の時のイヤな音楽が聞こえるたびに
重い気持ちになっていた。音しか聞こえない分よけいに怖くなったのかも知れない。
次の日の学校は女の子が中心にその話題が持ちっきり。あんな病気になったらやだねーとか
あんな(三浦友和)かっこいい人に愛されたらいいねとか、女の子は結構意見をいうなあ
と思った。自分は怖いという感想しか表現出来なかった。


しかしながら、自分が今、サイエンティストの端くれをやっているのは、実はこのドラマの
影響が非常にあったのではないかと思っている。
近所に大きな病院があり、子供の時そこの近くを通るたびに、「ああ、山口百恵のような
大きな病気の人がいるんだろうな。怖いなあ」と思った。
自分が医者になれるようなたまでないことは中学以降の成績を見たら明確で、医者に
なりたいとは思わなかった。しかし、基礎医学や生物学は医学部にいかなくても、
理学部や農学部でOKなので、そこからサイエンティストになることは可能だろうと思った。
結局、理学部も入れず、農学部にしか入れなかった。そこで結局、植物を中心に研究する
ことになってしまって、植物が材料上の中心になっている。
しかし、遺伝子の機能や構築、タンパク質の機能・発現といったことでは、人であるのか
動物であるのか植物か菌、昆虫かの区別は余り重要ではない。
結局、基礎生物学のサイエンティストとして、十分このドラマに刺激された人生を送って
いると言えるのだ。


さて、肝心のドラマの方だが、作成サイトとしては期待外れの低視聴率だったようだ。
自分も全部逃さず見たわけではないが、やはり30年前の背景を現代のそのまま持ってくる
というのは無理があったように思う。ましてや山口百恵版の「赤い疑惑」はそれまでにも
何度も何度も再放送をしてきた番組だ。どういう風にリニューアルしたのだろうと思ったが、
それは配役だけで、ストーリーが同じであれば意味がない。違っていたのは叔母(実の母親)
の拠点がパリから沖縄に変わっていた点だけだったか。
現代においてあの時代背景は違和感がありすぎだ。白血病の致死率が下がっているので
内容までリニューアルしようがないのは分かるが。
他にも放射性物質爆発事故で娘を被爆させてしまったなら、今なら管理責任を問われ、
陣内孝則は病院には残れないだろう。実の子でなかった問題も18才までそのことに
気づかないわけがない。最後の陣内の医学生を相手にした演説も学生は男ばかり。
すべてが時代劇を見ているにように感じた。原作で再放送を何度も見ているから、
次はこうなるぞ(黄門が印籠を出すぞ)のごとく、先が見えており、ハラハラ感が全くないのだ。
なかなか厳しかったと思うが、これで高視聴率がとれるほど甘くはないだろう。
今や娯楽はいくらでもあるのだ。テレビはいつもついているものではなく、見たい番組が
ある時にわざわざつけるものになってきているのだ。