大阪大学データ捏造事件その後

大阪大のグループが昨年10月、米医学誌「Nature Medicine」に発表した論文が、
データ捏造であった問題に関して新たなニュースが出ている。
http://www.asahi.com/life/update/0528/008.html?t
「学生側は「データ提出を急がされ、徹夜で心神喪失状態にあった」と説明し、
論文責任者の下村伊一郎教授は「圧力をかけたことはない」と食い違っている。」
とのことだ。
どちらが本当のことを言っているか、部外者には分からないことだが、色々調べると興味深い
ことが分かる。
取り下げた論文自体、現在も閲覧可能である。契約していなくても概要(Abstract)は
見ることができる。
http://www.nature.com/nm/journal/v10/n11/abs/nm1117.html
もちろん自分は全文入手し、分野外ではあるが目は通してみた。


「論文は学生と下村教授以外に12人の共同筆者がいるが、関係者によれば、今回の研究は
学生の提案で、実験の多くを学生自身で進めた。」
とのことだが論文を見る限り、はっきりいってかなり時間がかかる仕事で、到底学部の学生
が自身で進めたというのはあり得ないだろうと感じる。
関係者は関わりを否定したいために、自分はほんのちょっと関連しただけで何も分からない
と言っているのだろう。
仮に、本当に学生がやっていたとしても、このデータ量なら「ちょっとおかしいぞ」と
周りは思うのが普通だと思う。薄々怪しいぞと感じていながら、都合の良いデータを
出し続けてくれる学生を利用していた構図が垣間見れる。


ところで、この捏造した学生、論文で名前も出ているので、当然ネット上でもすでに名前が
出てしまっている。実はすでに一般人向けの本を何冊か書いている。執筆業界ではすでに
それなりの人だったのだ。
http://search.hatena.ne.jp/asinsearch?word=%b6%f0%c2%f4%bf%ad%c2%d9


これでなんとなく、状況が予想されてくる。頭の中でストーリーをまとめたりすることに
長けている人は文章を書くのが得意といえる。本を書くことも出来るわけだ。
が、だからといって優秀なサイエンティストになれるわけではない。頭で思った仮説が仮に
正しくても、必ずしも実験的に証明出来るわけではない。手先が不器用ならなおさらだ。
「下村教授に画像データを見せたところ、汚いからやり直せなどと言われた」。
で、画像を頭の中で考えている通りに修正したと言うことだろう。
一端たがが外れてしまえば、当たり前のように頭で考えた図を作成していく・・・
ということだろう。


今回のケースは双方に問題があると思うし、そういった雰囲気を見逃していた、関係者すべてに
責任はあるだろう。
今後このようなことがないように、どうしたらよいかをどこの大学においても話し合って
ほしいものだ。当事者だけの問題ではないのだ。


それから、もう1点。
名古屋大学の業績捏造事件。あの問題について、COEの審査の段階で業績捏造を見いだせ
なかったわけだが、それは審査に関わった人間の怠慢ではないかと思う。
審査の段階で書類に書かれている情報が真実かどうか当然調べるべきだろし、調べないの
なら、それは審査基準とは関係のない情報なのだから、わざわざ書かさなくても良いだろう。
申請書類の作成は、色々書く項目が多く面倒なのだが、結局見ないのなら書かせるなと言いたい。