疫学的調査

緑黄色野菜は健康に良いとされる。ビタミンが豊富で、体の調子を整えるのに良いからだ。


今日、こんなニュースが出ている。
http://www.asahi.com/life/update/0510/004.html?t1
野菜や果物には細胞の癌化を防ぐ抗酸化物質や、便通をよくする食物繊維が多く含まれ、
従来はたくさん食べれば大腸癌予防に効果があると考えられていた。


しかし疫学的な調査をしたところ、野菜果物の摂取と大腸癌の罹患率とは関連性がない
とのことだ。


疫学的調査とは、特定の集団内を対象に疾患率、死亡率など、健康に関わる事柄の頻度を
統計学的に調べることだ。
この場合、特定の集団というのが、野菜果物の摂取量の異なる集団で(4段階に分けている)、
それぞれの集団を対象に7−10年後の大腸癌の罹患率を調べている。
統計学的な解析なので、母集団の数(サンプリング数)が極めて重要になる。
今回は40−60才の男女9万人を対象とし、罹患者数が705人である。
個人情報について色々うるさくなってきている中で、こういう調査はなかなか数が集めにくい
だろうと思うが、十分多い数を対象に出来ていると思う。
地道な調査であり、決して最先端のことをやっているというサイエンティストとしての
喜びは感じにくい仕事であるだろうが、こういう解析は極めて重要だ。
得られた結果の、今までの常識を覆す結論。
次なる課題は山積みと言える。
ーでは、最近の食の欧米化の中で大腸癌の罹患率の上昇は何が原因なのか。ー


大腸癌に限らず、花粉症やアレルギー等、発症の原因を疫学的な手法で明らかにすることは、
極めて有効な手段といえよう。


とにかく、この方法の大変なことはサンプリング数を集めることだ。
不足したサンプリング数から得られた結果は、大きな間違った結論を導き出すことが
良くあるので注意が必要だ。
一部テレビ番組には、サンプリング数が全然足りない中での結果を、さもそうありなん
ごとく結論づけているものが多々ある。
これに対する批判はいずれ実例を挙げて書きたいと思っている。