韓国の幹細胞データ捏造事件

知人から韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)教授の捏造事件は書かないのかと言う意見があった。
あまり自分を刺激しないでくれと言っておいたが、自分はこのサイエンティストのデータ捏造
に関しては、特に強い主張を持っている。過去に捏造話は良く耳にしてきたし、実際自分も
実験を進める上で、かなり被害を被ったことがあるからだ。
まだ若かりし頃、自分は論文に書かれている内容をそのまま信じ、それを前提として仮説を起て、
次なる実験をしてしまったのだ。当時所属していた研究室内で、少し新たな分野の開拓でも
あったので、教授もしばらく自由にやらせてくれていたのだ。
結局、その実験は全く目論んでいたデータは出ず。2−3年の時間が成果としては無になった。
後になって分かることだが、そもそも極めて捏造くさい論文だったのだ。
高い授業料だが自分的には良い勉強になったとも思っている。
人のやった仕事を信じるな。
これは自分のサイエンティストとしての格言のようなものになった。


これまで大阪大の下村伊一郎教授の研究室のデータ捏造事件、そして東京大の多比良和誠教授、
川崎広明助手の研究グループのデータ捏造事件を取り上げてきた。
多額の税金がつぎ込まれている公的機関の研究だ。許されざることは厳罰に処して
行かなくてはならない。この2つの件においても最終結論はまだ報告されていない。
まさか、このままうやむやにすることは無いとは思うが、日本のマスコミもこの件をもっと
取り上げる必要があるだろう。
http://d.hatena.ne.jp/cell2005/20050522
http://d.hatena.ne.jp/cell2005/20050528
http://d.hatena.ne.jp/cell2005/20050915


韓国は国家プロジェクトとしてやっており、政府の威厳をかけ・・・などとかかれている
記事を見たが、それは日本だって同じことだろう。黄教授は英雄視されていたようだ。
さすがに日本ではそういう風潮はない。よって記事としては面白みがないということで
話題にならないだろうか。


この幹細胞クローン胚捏造事件、これまでの展開はおおよそありそうなパターンだと思っている。
11株あると言われた幹細胞は大元は2株だった。データの重複をわざと行う手法だ。
今後は残った2株が本物かどうか、そして最終的には本当に作成技術があるのかという
点が問われることになるのだろう。


多比良和誠教授が併任していた産業技術総合研究所では「産業技術総合研究所における
研究ミスコンダクトへの対応に関する規程」なるものが作られた。今年の8月1日付け
だから、まさに多比良和誠教授の件を視野に入れ作られたのだろう。
http://unit.aist.go.jp/genadm/legal/kitei/misconduct.html
こういった規定を他の公的機関も作成する必要があると思うし、捏造をおこなった人物に
対する処分規定も、明文化しておく必要が(本来そんなことまで規定するものアホらしいが)
あるのかもしれない。