東京大の多以良研究室問題

そろそろこのネタで書かないといけないなあ、と思いながらもう少し明確な発表はないのか
と待っていたが、いつまで経っても出てこないようなので、とりあえずここまでの意見を
書いてみたい。


まず、捏造が疑われていた論文の実験の再現が得られなかったこと、
また、当初助手が再現が得られたとしていた実験結果は論文に記載されていた方法と
異なっていることがニュースでは出ている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060125i401.htm
http://www.asahi.com/science/news/TKY200601210196.html
このニュースを聞いたときに自分は言いようのない不快感を感じた。まず、再現実験を
当の「容疑者」である助手自身にやらせて何の意味があるかということ。
それから、再現された実験は記載されていた方法と異なっていたことを前面に出していることだ。
問題の本質はそこではない。今更、大腸菌の系統の問題や遺伝子を組み込む時点での
制限酵素の勘違いでしたなどとの発表は完全に的外れだ。もし100歩譲って
それが原因ならそんなことは実験前に公表できることなのだ。


今回の中で、自分がもっとも危惧するのは東京大学の工学研究科がこの本質でないことを
前面に出して自体の収拾に努めようとするものを感じることだ。
「捏造の疑いは晴れないが、捏造だったと明確にできる状況も見いだせなかった」とのことだが、
そもそも助手に単独で実験させて、そんな証拠が得られる訳もないだろう。
明らかに調査不足であり、東京大学のこの事件に対する危機感の薄さ、問題意識の薄さを
感じざるを得ないのだ。
柳田先生の1/28のブログにもあるように、「性善説」に基づいての、調査をしても
意味がないだろう。様々な噂や調査に至った状況があったからこそ調査を開始したわけで、
捏造があることが前提で考えなくてはならないことなのだ。
http://mitsuhiro.exblog.jp/3444218/


そして東京大学自体は今回の件において、なんら正確な記者会見をおこなっていないのではないか。
ニュースに出てくる情報は断片的で誰がどういう責任の元に言ったかも分からなく、
どれも到底信頼・納得できるものではない。
研究室のWEBサイトも情報公開どころか最近になってリンクが切られている。
国側がここ数年間に多以良研究室に支払われた、何億もの研究費の返還を求める動きがあるが、
もっと積極的に市民オンブズマンあたりが無駄な税金の支出ということで、東京大学に返還
請求訴訟を起こしても良いくらいだろう。


日本でトップの大学がこのような学問のもっとも基本であり根底をなす問題に対し、
こんな情けない対応しかできないのは、極めて問題だと感じる。