東京大学大学院工学系研究科の多比良和誠教授らの捏造問題。兼務する産業技術総合研究所
(産総研)は、独自調査の結果、不正の疑いは否定できず、論文の取り下げを勧告した
とのことだ。
http://www.asahi.com/national/update/0304/TKY200603030389.html?ref=rss
捏造疑惑論文で産総研が初めに調査した論文では捏造の証拠は得られなかったということ
だったが、その後調査した論文はすべて「黒に近い灰色」だったようだ。産総研も状況を
見ながら悪い結果は東京大学が出してからと考えていたのだろう。
産総研のサイトに具体的な報告が出ている。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2006/pr20060303/pr20060303.html
結果は先の東京大学の記事で明らかにされている内容と変わらないような感じもあるが、
産総研の意図を感じる部分もある。
多比良和誠氏が直接実験をしたわけでないとのところが強調されているのだ。
研究記録が残ってないものは川崎広明氏の仕事のみで、「根拠が不十分な状態で論文を公表
していることは、研究者の社会的責任を果たしているとは言い難いので、これを取り下げるよう、
産総研として責任著者である多比良和誠研究センター長に勧告する」とのことだ。
産総研が持ち上げたのは多以良和誠氏であり、その協力研究員である川崎広明氏の行為に対する
産総研の責任は低いと読める。
多比良和誠氏の責任は「産総研における川崎広明氏の受け入れ担当者として、また共著論文の
責任著者として川崎広明氏の研究を管理・監督する立場にあったにもかかわらず、川崎広明氏との
生データでの議論や実験記録の保存などについて適切な管理を怠ったため、科学的な根拠が
不明瞭な状況のまま論文が公表される事態を招き、研究管理者としての責任を果たしていない。」
とのことだ。
これもまた多比良和誠氏は間接的な責任であることを主張しているように思える。
そして今回は何の記述もないが、産総研が多比良和誠氏をジーンファンクション研究
センター長に持ち上げた時には、すでに多比良和誠氏や川崎広明氏の黒い噂はあったのだ。
そういうメンバーを産総研に呼んだ産総研自体の責任については延べられていない。
これも十分批判・議論されなくてはならないことだが、産総研自体がそう言った議論を
するとか考えにくいだろう。政府なりがそいういうことを言わなくてはいけないだろう。
それでも産総研はこうやってWEBサイトに状況をちゃんと報告していることは評価できる。
が、東京大学や大阪大学の下村伊一郎研究室の捏造に関しては大学のWEBサイトの
どこを探してもそういうのが見あたらない。
本来TOPページにリンクを付けるべき事のように思う。
「東京大学工学研究科は研究の紹介、教育の新たな取り組み等をメディア関係者に広く
お知らせすることを目的として定例記者会見を平成14年10月より開始いたしました。」
とのことだが、事件が明らかになってから更新が止まっている。全く世間の欲求とは逆の対応だ。
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/public/info/press/index.html
まさにこのままうやむやにという魂胆が垣間見られるのだ。
大学や国が管轄していた研究所はどこも独立行政法人化の中で広報活動に力を注いでいる。
しかし、公的機関であることが変わらない中、広報活動のあるべき姿は自分らに都合の良い
ことをだけ並べ立てることではないはずだ。
捏造問題に関して、東京大学も大阪大学も公的機関としての説明責任を全く果たしていないと考える。