センサータンパク質

朝から「おおー」と思うニュースを知った。
http://www.asahi.com/science/news/TKY200603050208.html
植物が二酸化炭素を感知する時に主要な役割を果たしている遺伝子を、九州大学らの
グループが特定したとのことだ。責任著者の教授も知っているし、こういう仕事に関わって
いるのも知っていたが、別のグループは少し下等な植物で同じようなことをやっており、
そちらが先かと思っていたのだが、今や高等植物でもかなり複雑な現象に関わる遺伝子を
明らかにできるほど、様々な技術やツールが揃ってきているということだ。
http://www.nature.com/ncb/journal/vaop/ncurrent/abs/ncb1387.html


高等植物は自ら動くことができないわけで、環境変化を迅速に感知し、それに対応する
遺伝子群を発現させ対応しないといけない。対応できない種は滅び、今残っている種は
現在の環境に対応できた種と言うことになるのだ。
それで、この環境変化を感知するセンサータンパク質を作る情報が書き込まれている
遺伝子がどれかという研究は植物分野でもトレンドなのだ。
自分も過去かなり近いことをやっていたが、この論文の著者らと同様な手法、すなわち
環境変化に対応できない変異体を取り、その原因遺伝子を遺伝学的な方法で明らかにして
いくというのが王道だ。


二酸化炭素は植物の光合成の元になる物質で、植物の葉にある気孔という組織から取り込まれる。
ここらへんは中学の理科で習うことだろう。二酸化炭素の濃度が高いと植物は楽に気孔から
取り込めるため光合成が盛んになる。が、そうなると植物は怠けてしまうようで、気孔を
閉じて自ら二酸化炭素をあまり取り込まないようにしてしまうのだ。
農業の重要な技術に二酸化炭素施肥というのがある。ハウスなどでわざと二酸化炭素
濃度を上げて成長を盛んにしてやる方法だ。この方法も短期的には有効だが、長期になると
なぜか植物が怠けてしまい効果が薄れる。
なぜ怠けるのかは分からないが、その時に植物が二酸化炭素濃度を感知して気孔を開けたり、
閉めたりしているわけだ。
このメカニズムが明らかになれば、無理矢理ずーと気孔を開けさせて、植物に懸命に
光合成をさせることも可能になりそうだ。作物生産力の向上だ。
そういう意味で今日のこのニュースは個人的にちょっと感激している。ああー自分が
この発見をする可能性もなくはなかったはずなのだが・・・