ハイリスク研究の補助金

文部科学省は、成功の見込みが「十に一つ」程度でも、大きな成果につながる可能性が
あると判断した研究に対して、新たな補助制度を設ける検討を始めた。とのことだ。
http://www.asahi.com/science/update/0511/TKY200705110188.html
記事にもあるように、成果が確実と期待される研究に補助金が集中し、革新的な研究が
出にくくなったとの反省がある。
確かにそうだろう。もちろん、成果偏重主義はここ数年問題になっている
サイエンティストによるデータ捏造や業績の捏造に関する問題にもつながっている。
そういう問題も背景にあるのだろう。


これらを問題視し、検討することは確かに重要なことではある。しかし、実際は非常に
難しいのではないかというのが実直な感想だ。運用を誤れば、審査する人のツテや
コネによる研究費の配分がなし崩し的に行われてしまう懸念がある。
また、どういう立場の人を申請や採択の対象にすべきかも十分検討する必要があろう。
いわゆるボスクラスの人がこのような研究費を獲得した場合、実際にやらされる下の
人間はなかなか辛いのではないだろうか。「十に一つ」の成果を得ることはすでに
ボスクラスになっているサイエンティストにとっては「大当たり」の夢のみ見ていれば
良いのだろうが、やらされる人間にとっては「十に九つの夢叶わず」の結果が出た
場合、どうやって潰しを効かせるつもりなのだろうか。
下にいる人間にとって、プロジェクトに採択されたからと言って、意に反し無理矢理
こんな「討ち死に」的プロジェクトをやらされるということになったら堪らない。


最初は補助額を抑え、進展状況をみて打ち切ったり、増額したりできる制度も検討している。
とのことだが、これでは途中で成果を要求されているのと何ら変わりがない。
予算規模も不明なままだが、あまり大型な予算にはせず、その代わり長い時間予算
枠が約束されたものとした方が良いのではないか。
新規に期限付きのサイエンティストを採用するのではなく、別のプロジェクトに
関わっている人が片手間で行うべきプロジェクトという立場の方がこういう
ハイリスク研究には向いているように思う。


なんだかんだいっても、成果が挙がらない研究をおこなっていても評価されない。
サイエンティストとして生き残りをかけるなら、仮にハイリスクなプロジェクトを
行うにしても、それに平行して確実なプロジェクトも進めることは必須に感じる。