大阪大学の下村問題

一昨年、論文誌Nature Medicineに掲載した論文を巡って、捏造問題を引きおこした
大阪大学の下村伊一郎氏に関するニュースが再度出ているようだ。
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20070615ke03.htm
先のNature Medicineとは別に2004年にScience誌に掲載していた論文について、
所属する大阪大学医学研究科教授会は、「都合のよい実験結果をもとに構成している」
などとして、取り下げるよう下村教授に求めたとのことだ。
書かれた方法に準じて再実験しても報告された働きが証明できないらしい。
怪しい結果をそのまま検証不十分なまま、論文にしてしまった典型的パターンだ。
該当の論文は以下のものだが、どの程度の問題なのかは分からない。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/307/5708/426
しかし、22名もの著者がいる中で、結果に対し疑問を呈する人間はいないのだろうか。
医学部の世界のことは分からないが、自分のような基礎科学の人間なら上下関係など
気にせず、徹底的に疑念を訴える人が研究室に数人いるのが健全な姿だ。
この点からも全くサイエンスを進める土壌がない組織なのではないかという疑念を
感じざるを得ない。


いずれにせよ、先のNature Medicine誌のみでなく、かなり「いい加減な」研究を
やっていた研究室ということが明確になったわけだ。当然これは下村氏のサイエンティスト
としての「終わり」を意味することになるので、下村氏が徹底的に抵抗するのも
分からないでもない。しかし結局、下村氏のサイエンスポリシーが一般的な規範から
外れたものであるということがはっきりするだけではないだろうか。この人は医師でもある。
サイエンティストからは足を洗い、それこそ医師として患者のための医療を考えた方が、
本人にも世の中のためにもなるのではないだろうか。


国際的に優れた大学の研究拠点に国が高額の補助金を出す「グローバルCOEプログラム」
の採択結果が出たとのことだ。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070615i113.htm
採択結果は以下のサイト。
http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/04_shinsa.html
計28大学63件の採択だ。1件当たり年2.6億円の5年間なので13億円ということだ。
プロジェクトの合計は13x63=819億円となる。
驚いたことに一番採択件数の多い大学が大阪大学で7件。大学全体に対する審査面での
悪印象は払拭できているようだ。